令和5年度補正予算 需要家主導型太陽光発電導入支援事業
令和5年度補正予算 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業

令和5年度補正 太陽光

発電と営農を同時並行で行い
再エネ普及、地域振興を両立させる

フジサービス株式会社

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本事業のポイント

中部電力ミライズのカーボンニュートラル関連部署との窓口となった、フジサービスの嘉藤さん。
ポイント1

バーサティリティ(Versatility)多用途性

再生可能エネルギー電源としての太陽光発電の開発に取り組む過程で、壁になるのが用地の問題だった。弊社は太陽光発電が持つ多用途性から農業分野での利用に着目し、営農型太陽光発電施設の開発に取り組んできた。

ポイント2

デュアルユース(Dual use)用地の二分野での同時利用

太陽光発電と農業を、同じ土地で両立させる仕組みがアグリボルタイクス(Agrivoltaics)。日本では発電施設開発に適した平地が不足しているため、農地の上部空間に発電設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う方法とした。

ポイント3

コンティニュイティ(Continuity)継続性

営農における圃場展開能力以上に、営農型太陽光発電施設の拡大はかなわない。高齢化や後継者不足等の課題を持つ農業の継続性を担保するため、大規模圃場を営む農業法人とのアライアンスが有効かつ現実的な手段となる。

本事業の概要

「営農型太陽光発電で、農業の活性化にも貢献したいと考えました」と語った、
フジサービスの伊藤社長。

2002年に設立したフジサービスは、電気工事業から始まり、2010年頃から太陽光発電を中心に再生可能エネルギー事業にも注力してきた。発電所の建設、プロデュースを進めながら、自ら発電事業者となり、再エネの普及、導入促進に寄与したいと考えるようになった経緯がある。そこで着目したのが営農型太陽光発電だった。農地に太陽光発電設備を設置し、発電と営農を同時進行することで、再エネ普及に加え、農業・地域振興、脱炭素社会の実現への貢献を企業活動の核に据えている。

太陽光発電設備の下では、柑橘系栽培が盛んな静岡県の地域性を考慮し、
レモン栽培を行っている。

本事業は、再生可能エネルギー、自然エネルギー電気の地産地消をUDA(User-Driven Alliance)モデルの下、オフサイトPPA手法の導入により実現した。電源としては、営農型太陽光発電を用いている。営農型太陽光発電とは、一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立て、上部空間に太陽光発電設備を設置し、営農を継続しながら同時に発電を行う方法だ。
本来は、作物の販売収入に加え、太陽光発電電力の自家利用等による農業経営の更なる改善を目指す方法で、EUでは日照や農作業の妨げにならないところに発電施設を設置している。日本の場合、そもそもの用地が狭いため、農地の上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う仕組みが現実的だ。また、発電した電気は小売事業者を通じて、遠隔地にある需要家企業へ送電することで、オフサイトPPAの形態となっている。
参加事業者は以下の通り。
電気需要家/ローム浜松株式会社
電気小売業者/中部電力ミライズ株式会社
発電事業者/フジサービス株式会社
実施場所の1つは静岡県浜松市中央区の農地(23,141.29㎡)で、電源容量は「AC(交流)1,600.0Kw DC(直流)2,012.685kW」。もう1か所は浜松市浜名区の農地(7,372㎡)で、電源容量は「AC(交流)500.0Kw DC(直流)622.39kW」。
どちらも発電施設の下ではレモンを栽培している。

本事業の導入経緯

営農型太陽光発電施設は、農地上部での発電と、その下の農地での営農を並行して行うことで成り立っている。農地の上に太陽光発電設備を設置するため、必然的に日射量は制限される。これまでの弊社がプロデュースしてきた施設では、日射が制限されても栽培可能な作物か、制限が有効となる作物を選び、その地域での収穫量の基準を満たすかを、営農者、及び発電事業者に提案してきた。
本事業では、それぞれの産地において栽培が行われている作物の圃場があり、そこにどう太陽光発電設備を導入できるか、という流れで検討を始めた。太陽光発電と農業を、主と従ではなく、対等に同時並行して進めることで、持続的な発電と農業の活性化を実現するところに本事業の意味がある。
用地として選んだのは、静岡県浜松市で柑橘類の栽培を行っていた場所だ。静岡県は、愛媛県、和歌山県、熊本県、宮崎県などと並ぶ柑橘類の主要産地の一つであり、県西部地域で、大規模な柑橘類栽培圃場を管理運営する農業法人に協力を求めることができた。この荒廃地を太陽光発電設備の立地として、再生可能エネルギーの電気小売業者となる中部電力ミライズ株式会社様と協議し、電源開発について、UDAモデルに拠るオフサイトPPAのスキームで進めることを定めた。

需要家、発電事業者、電力小売事業者が協力し、再エネの普及、安定供給を実現するスキームを構築した。

農地に営農型太陽光発電設備を設置するにあたっては、農地法に基づく一時転用許可を受けている。また、長期安定的に発電事業を行うため、地域の方々の理解を得ながら事業を進めていくことも重要になり、長期の営農体制の確保、安全対策などをふまえた説明会も実施した。
営農計画書の策定も、営農型太陽光発電には必須となるポイントだ。協力していただいた農業法人が、当地域での柑橘栽培に十分なノウハウを持つため、作物はレモンに。10aあたりの単収見込み、作付けから収穫までかかる期間を盛り込んだ営農計画書を策定し、農業としての未来像も明確に示している。
需要家企業に関しては、ローム浜松株式会社様が、営農型で発電される再生可能エネルギー電力について、持続性・追加性の視点、環境負荷低減と地域貢献につながる点、またカーボンニュートラル上の炭素会計に寄与するものとして、営農型太陽光発電で発電される再生可能エネルギー電力の導入をお決めいただいた。需要家・電気小売事業者・発電事業者の三者が合意し、電力地産地消のUDAモデルが成立した。

UDAモデルがもたらすメリット

「地域の農業と密接に関わり、再エネ普及と農業振興を両立できるのが、
この事業の大きなメリットです」と嘉藤さんは語る。

再生可能エネルギーを必要とする需要家が再エネ電源の開発意向を示し、長期にわたる電力買取りなどにより発電事業に関わり、需要家・小売電気事業者・発電事業者が一体となって、再エネの普及・導入を進められるのがメリットとなる。再エネ電気を利用する需要家企業が、需要場所から離れた用地(オフサイト)で発電した再エネ電気を、電気小売電気事業者を介して供給を受けるオフサイトPPAスキームによれば、需要家企業が受けるメリットは次の3つだ。
・太陽光発電設備を導入する設備投資費用を抑えられる。
・事業活動に関連して排出された温室効果ガスの総排出量(サプライチェーン排出量)から、自社で直接的に発生した温室効果ガス排出(Scope1)と、他社から購入したエネルギーを使用することで、間接的に発生した温室効果ガス排出(Scope2)において、排出量を低減が可能になる。
・以上の活動がGX(グリーントランスフォーメーション)の達成、その施策であるカーボンニュートラルの実行に寄与することになる。
「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」にもとづき、これまで、再生可能エネルギーは、FIT/FIPなどの制度によって普及・導入促進が図られてきた。本事業は、従来型の買取り制度に頼らずとも、需要家の実需にもとづき、デマンド・サプライで電力を供給できるという点で、再生可能エネルギーの普及を別の角度から後押しすることになるだろう。契約が長期にわたること。発電した電力の需要家の顔が見えるところ。その土地に合った作物の栽培が、農業の活性化、地域振興にもなるところ。こうした部分は、需要家企業だけでなく、用地提供者、電気小売業者、発電事業者を含め、地産地消に関わるすべてのステークホルダーのメリットといえる。

再生可能エネルギーに対する
今後の展開

政府の第7次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを、2040年度にエネルギー構成全体の4割から5割程度まで、再生可能エネルギーを拡大する方針だ(太陽光は全体の22~29%程度、風力は4~8%程度)。持続可能な社会の実現に向けては、グリーン水素プラント、データセンター、EVチャージャーなど、再生可能エネルギー需要を前提としたインフラ増大が見込まれており、電源開発の手を緩めるわけにはいかない。

フジサービスでは、太陽光発電の多用途性をふまえ、
再エネのみで運営するゼロ・エミッション・ファームを計画している。

太陽光発電の場合、日本には発電に適した平地の不足という問題がある。そんななか、過剰な環境破壊をともなう景観変更を抑えながら、エネルギー以外の他分野での再生可能エネルギー需要に小まめにミートすることで、太陽光発電の多用途性を生かした電源開発も必要ではないか。

その実践として、弊社では、太陽光発電による再エネ電気で焼くパン屋を多店舗展開し、営農型太陽光発電を利用するゼロ・エミッション・ファーム、農園カフェのモデル構築に着手している。極めて微力ではあるが、年間30兆を超える化石燃料の輸入代金額を少しでも国内に貫流させ、豊かな成長を続ける国づくりに貢献していきたい。

中心メンバーとして本事業のマネジメントを行った、フジサービスの嘉藤さんは、
今後の再エネ事業への意気込みを熱く語った。

フジサービス株式会社の実施体制スキーム図

本事業に関するお問い合わせ先

フジサービス株式会社

〒454-0852 愛知県名古屋市中川区昭和橋通6丁目13

TEL:052-382-2799

FAX:052-387-5277

フリーダイヤル:0120-334-378

Email:info@service-fuji.co.jp

担当者:電源開発部 嘉藤

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