令和5年度補正予算 需要家主導型太陽光発電導入支援事業
令和5年度補正予算 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業

令和5年度補正 太陽光

地産地消の再エネUDAモデルで
地域課題の解決にも貢献したい

株式会社SPG

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本事業のポイント

ポイント1

地域産業と再生可能エネルギーを結びつけ、新たな価値を創出するエネルギーモデル

地域の地場産業が必要とするエネルギーを、地域で生み出される太陽光電力と結びつけることで、産業とエネルギーの共存を実現。伝統的な窯業・製造業が抱える脱炭素社会に向けた課題に対し、補助金を活用しながら新たな投資を呼び込み、競争力強化を図った。

ポイント2

多様なステークホルダーが役割を担い、共創で成り立つエネルギーの地産地消モデル

需要家企業、発電事業者、電力小売事業者、発電設備を設置する屋根や用地を提供する事業者、地域金融機関などが連携し、それぞれの立場から地域のエネルギー供給を支える。多治見通運株式会社のような企業が「地域のためになるなら」と屋根を提供するように、参加企業の自発的な関与が事業を支える力となっている。

ポイント3

発電と消費の関係を変革し、再生可能エネルギーの最適利用を実現する仕組みを構築

エネルギーの「つくる」と「つかう」の双方が歩み寄ることで、持続可能な再生エネルギー循環モデルを形成。今後は、発電に合わせた需要の調整や蓄電池の活用によって、再生可能エネルギーの普及と価値向上を目指していきたい。

本事業の概要

拠点のある多治見市では「エネルギーの活用法の転換が大きな地域課題となっていた」と、SPGの代表取締役社長、磯﨑顕三さん。

株式会社SPGは、岐阜県多治見市を拠点に再生エネルギー事業を展開する株式会社エネファントの関連会社であり、太陽光をメインとしたエネルギーソリューションを提供する発電事業者だ。エネファントは家庭用の太陽光発電設備の販売、設置からはじめ、再生可能エネルギー事業へと拡大し、2018年、小売電気事業者となり、たじみ電力事業部を立ち上げ。2020年のSPG設立によって、電源開発とコンサルティング、発電、小売りまでをワンストップで提供できる事業体制を構築した。
SPGが発電所を建設し、多治見市を拠点とするたじみ電力事業部を通じて、地域の需要家に再生可能エネルギーを供給する、というのが本事業の基本的な枠組みである。「地産地消」によって再エネの導入、普及、安定供給を実現したいという思いが当初からあった。
多治見市は「土と炎の街」として知られ、良質な土と、それを焼き上げるエネルギーを活用しながら発展してきた地域だ。今も、美濃焼の窯元、タイルメーカーなど、先人たちがつくりあげた基盤上で事業を営む地場産業は多い。土を焼くには、熱源を生むためのエネルギーが必須であり、世界的に脱炭素の流れが加速するなかで、エネルギーの活用方法をどう転換するかが、大きな地域課題になっていた。
伝統を継承し、地場産業として持続可能なモデルへ移行するには、再生可能エネルギーの利用が有効であることは、多くの事業者が承知している。だが、自ら太陽光発電の設備を持つには大きな投資が必要となり、老朽化した事業所の屋根等に設置するのは現実的ではない。そうした課題の解決法の1つとして、地場産業と再生可能エネルギーの融合を促進する取り組みの検討を始めた。
再生可能エネルギーの発電、送電、利用が地域内で完結し、携わるステークホルダーはもちろん、地域全体の振興につながっていくような、ある種のエコシステムの構築を目指している。大きな投資が必要になるが、地域の金融機関の理解と補助金事業への採択によって、一歩踏み出すことができた。

本事業の導入経緯

「地域の企業も再エネ利用の必要性を理解しているが、
自前で設備導入するにはコストがかかりすぎる。その壁をどう乗り越えるかを考えた」(磯﨑さん)

前述したように、多治見市の地場産業である窯業、タイル等の製造業はエネルギー消費量が多く、安定した電力供給が事業継続には欠かせない。一方、脱炭素の流れの中で、温室効果ガス排出への関与についても企業としての姿勢が問われている。各社がそれぞれ取り組むにはコスト等の壁があり、地域共通の課題となっていた。

SPGの設立には、地域内に発電設備を持つことで、こうした課題の解決に貢献したいという思いがあった。太陽光発電の設置場所については、多治見市で運送業を営む多治見通運株式会社に対して、事業所の屋根の提供を依頼した。同社からは「地域のためになるならぜひ協力したい」と、本事業への快諾をいただき、ともに地域全体での再生可能エネルギー推進に貢献することで志を1つにできた。
提供していただいた屋根にSPGが太陽光発電設備を設置し、生み出した電力はたじみ電力を通じて、多治見市を中心とした需要家のもとへ届ける。実施場所の電源容量はAC0.45MW/DC0.76MW、運転開始時期は令和7年2月。需要家は、安価で安定して提供される再エネ電力によって事業を行い、それが地域の活性化にもつながっていく。本事業は単なる電力供給ではなく、地場産業の持続的発展を支援する取り組みでもある。

発電設備を、野立てではなく施設の屋根に置いたのは、野立ての適地を探す時間との兼ね合いもあったが、地域内で事業を営む施設の屋根を利用したほうが、地域全体で取り組むという主旨に沿っている、という考えもあった。長期契約できる屋根に限りはあるが、今後もこうした案件を増やしていきたい。

UDAモデルがもたらすメリット

単に再エネを供給するだけでなく、地域のプレーヤーが協力し、地産地消のモデルになっているのが本事業の特徴。「大きな手応えを感じている」と磯﨑さんは語る。

一般的なUDAモデルは「再エネ発電事業者と需要家の間で契約を交わし、小売電気事業者やアグリゲーターを介して、電力供給が行われる新しいビジネスモデル」とされているが、本事業はそこに地域性、地産地消というファクターを加えたのが特徴といえる。発電事業者のSPG、たじみ電力事業部はもちろん、取り組みに携わるプレーヤーのすべてが地域に根を張り、事業を行っている。

太陽光設置場所を提供していただいた多治見通運だけでなく、設備を建設するための資金調達においては、岐阜商工信用組合にも積極的に関与していただいた。投資額は弊社にとっても、金融機関にとっても小さくない額になるが、本事業の意義、地場産業の持続的な発展、地域振興にもつながる点にご理解をいただき、「一緒に基盤づくりを支える」という点でビジョンを共有できた。
需要家はさまざまで、地場産業であるタイルメーカーなどの製造業があれば、福祉系施設を運営する法人、自動車ディーラーなど、地域で事業、サービスを提供している多くのプレーヤーに電力を供給している。自動車ディーラーは、今後、EVの普及に向けて急速充電器の整備を行っており、再生可能エネルギーとの親和性は高い。

需要家にとっては、設備投資を行なわずに、再生可能エネルギーを安定して供給してもらえるのが最大のメリットだ。温室効果ガス排出の低減、カーボンニュートラルの実現という面でも得るものは大きい。発電事業者、小売事業者の視点では、需要家と長期の契約を結ぶことで、投資リスクを下げながら、安定した収益を確保できるのがメリットだ。
こうした一般的なメリットに加え、本事業は地産地消、地域経済と密接に結びついた循環型の再生可能エネルギーモデルであり、地域のプレーヤーが役割分担し、一部の大企業や外部資本に依存しない、地域主体のエネルギー供給の仕組みを確立できるところが特徴である。これも長い目で見た場合のメリットになるはずだ。

再生可能エネルギーに対する
今後の展開

発電量を増やす「量」の取り組みも重要だが、今後は「質」にも目を向けていくべきだ。質とはつまり「需要のコントロール」。これまで、電力は需要に合わせて供給を行うのが絶対で、常に余剰分が生まれていた。見方を変え、特に再生可能エネルギーについては、需要が供給に歩み寄ることで最適化が可能になるのではないか。かみ砕くと、電力を「つかう側」と「つくる側」の歩み寄りだ。
大きな発電施設から、広域に向けて供給する電力事業者には難しいかもしれないが、弊社のように、規模は小さくても、地域に根差した事業を展開し、小回りがきく事業者なら可能ではないか。需要家に対して丁寧な説明を行い、理解していただいた上で、つかう側とつくる側が歩み寄れば、再生可能エネルギーのメリットである持続可能性を、より広く享受できるようになるはずだ。
一方、経済合理性も考えなければいけない。脱炭素を優先し、エネルギー価格を二の次にするのではなく、地域の需要家が安定して、かつ安価な再生可能エネルギーを利用できる環境を整え、地域経済を支えていくのが我々の使命。再エネの課題である安定供給の補完策については、太陽光+系統用蓄電池の活用、また水力、バイオマスなど、他の電源開発にも積極的に取り組んでいくつもりだ

多治見通運株式会社の施設屋根に設置した太陽光発電施設は、AC0.45MW/DC0.76MWの発電量。地域のさまざまな業種、業態の企業にエネルギーを供給している。
目指すのは、日本一電気代の安い街。「今回の取り組みを通じて、再エネ事業をさらに加速させていきたいと思います」(磯﨑さん)。

株式会社SPGの実施体制スキーム図

本事業に関するお問い合わせ先

株式会社SPG(発電事業者)

TEL:0572-26-9336

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