令和5年度補正予算 需要家主導型太陽光発電導入支援事業
令和5年度補正予算 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業

令和5年度補正 蓄電池

併設型蓄電池の独自制御により
太陽光発電の利用価値を高める

ENEOSリニューアブル・エナジー・マネジメント
株式会社

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本事業のポイント

ポイント1

出力制御による売電機会損失の回避

太陽光発電所の増加に伴い、日中時間帯に出力制御を求められるケースが多くなっており、売電機会の損失を招いている。特に太陽光発電が盛んな九州エリアではこの傾向が顕著にみられている。この課題は経済効率の面からも非効率であり、早急な対策が必要だった。

ポイント2

再生可能エネルギーの安定供給

政府の推進する再エネ大量導入には再エネ発電所の開発が不可欠である一方、再エネの主な発電時間帯にて出力抑制による再エネの無駄が生じてしまうという、発電事業者にとって不本意な状況が発生している。出力制御の要請を受け、発電を停止している時間帯は、当然ながら電力供給が行えない。発電事業者として安定的に電力を供給ができる体制を整えておくことは重要な使命であると考えている。

ポイント3

FIP+蓄電池のビジネスモデルへの参入

上記のような課題に対しての解決策として、太陽光発電所に蓄電池を併設し、「FIP+蓄電池」による売電機会喪失の回避、再生可能エネルギーを常に安定供給できる体制を本補助金事業で構築した。

本事業の概要

取材に応じていただいた、ENEOSリニューアブル・エナジー・マネジメント株式会社、水野さん(写真左)、高橋さん(写真右)

本事業を推進したENEOSリニューアブル・エナジー・マネジメント株式会社は、ENEOSリニューアブル・エナジーグループが展開する再生可能エネルギー発電所の管理・運営を担うことを目的に、2013年に設立された。現在は、日本各地の100を超える太陽光、陸上風力、バイオマスの再生可能エネルギー発電所の管理・運営を行っている。2023年度、グループでの設備容量は1.3GWを超え、売電量は一般世帯約35万世帯分の年間消費電力に相当する。
また当社では、アセットマネジメントとオペレーション&メンテナンス業務を通じて、再生可能エネルギー発電所を運営し、将来の主力電源として長く運転できるよう、発電所の長寿命化や効率化、さらに付加価値向上にも取り組んでいる。
本事業では、既設の高圧太陽光発電所をFIT(固定価格買取制度)からFIP(市場価格連動型制度)へ移行するとともに、蓄電池を併設し、当社独自の制御によって最適な運転を行うことを目的とした。FIT制度では固定価格での買い取りが行われるが、FIP制度では柔軟な売電が可能であり、利用者目線でも、発電事業者目線でも、再生可能エネルギーをより効率的に活用することができる。
実施場所は福岡県福智町のJRE福智第三太陽光発電所。敷地内にコンテナ3台の蓄電池を設置した。蓄電池の容量は1台3.44MW、合計10.32MW分を導入している。

本事業の導入経緯

「再生可能エネルギー発電所の運営と、発電所の長寿命化や効率化、さらに付加価値向上にまで取り組むのが弊社の特徴です」と高橋さん。

太陽光発電に適した土地が多い九州地区は、メガソーラー発電所などの建設が進み、全国の太陽光発電の約2割を占めるといわれている。しかし、再生可能エネルギーの発電量は天候に大きく左右されるため、電力系統の安定性を保つ目的で行う、需要量に合わせた出力制御が最も多いのも九州だ。出力制御が日中に実施されると膨大な量の再生可能エネルギーの電力が無駄になり、発電事業者にとっては売電機会の損失につながっている。この問題を受け、弊社では2023年から出力制御への対策を検討してきた。
出力制御が入ると、当然、売電電力は想定値よりも下がってしまう。発電所の立場からすると、余力があるのに制御するのはもったいない。そのため蓄電池を併設し出力制御中に充電し別の時間で売電するという案は昔からあるが、価格が高く採算が見込めない状況が続いていた。そんな中で、経済産業省では蓄電池併設推進に向けた議論が始まり、2024年に入り蓄電池併設推進の方針が明確に示された。また、蓄電池市場価格の低下を背景に、当社では蓄電池併設の可能性を検討している中で、本補助金の対象となる可能性を知り、蓄電池併設の検討を加速させた。
前述したように、3.44MWの蓄電池を3台と、パワーコンディショナーを組み合わせ、設置した場所は福岡県のJRE福智第三太陽光発電所。この発電所を選んだ理由として大きいのは立地条件だった。サイズと重量の関係で、3.44MWの蓄電池を搬送できる場所は限られる。現地での設置作業にも、大型クレーンと作業員が必要なため、補助金のスケジュールに合わせて導入することもふまえ、最善の場所だと判断した。
2022年1月から、茨城県のJRE稲敷蒲ヶ山太陽光発電所で、併設蓄電池を運用している案件があり、そこで積み重ねた制御のノウハウが本事業に反映されている。最適充放電計画の策定、実アセット制御におけるインターフェース開発経験等があり、さらに補助金の後押しもあったことで早期導入が可能となった。
蓄電池の制御指令は、系統からの指令、蓄電池メーカーからの指令、発電事業者側での指令の3つに大きく分けられる。我々は、上位指令である系統からの出力制御指令や、蓄電池メーカーからの指令に応じ系統への逆潮流量を制限しつつ、可能な限り発電継続できるよう、蓄電池への充放電タイミングをコントロール。電力市況予測と発電量予測を基に、出力制御がかかりやすい時間帯にて充電、需給がタイトになる時間帯で放電する制御を、独自の技術を使ってきめ細かく行っている。

また、ENEOSリニューアブル・エナジーグループとして見た場合、発電所開発/所有、運営管理を行う発電事業者の側面と、電力需給管理や小売電気事業を行う再エネアグリゲーション機能を有している。設計、開発については技術部隊が担い、蓄電池メーカーなどからの部材調達、発電した電力の売電先との契約を含め、グループ内のワンチームで取り組める体制が構築されている。本事業は補助金の申請、執行を含めタイトなスケジュールだったが、期限内に完了できた背景にはプロジェクトマネージャーを中心とした、プロフェッショナルが集まったチーム体制がある。

本事業がもたらすメリット

出力制御の課題に対応する手段として、「FIP+併設型蓄電池というモデルを導入できたのには大きな意義がある」と水野さん。

太陽光発電の出力制御は、九州地方はもちろん、今後他の地域でも増加していく見込みだ。再生可能エネルギーは変動電源であり、出力制御と安定電源化にどう対応するかは、すべての再エネ事業者に共通する課題となっている。その解決策として、蓄電池の存在は以前から知られていたものの、効果的に活用している事例はまだ少ないのが現状だ。本事業により、「FIP+蓄電池」というモデルを導入できたのは、今後の再エネ事業を考える上でも大きな意味を持っている。系統混雑が深刻な地域でも、太陽光発電の運転に合わせて充放電制御ができるのは併設型蓄電池だからこそできることであり、また、送電時間を後ろに変更するタイムシフトができることは、電力系統全体から見ても大きなメリットになる。
電力市場は様々な市場があり中には秒単位で動く様な市場もある。我々は現時点ではJEPXの前日市場と時間前市場で取引をしている。市場によっては電気が足りないから今すぐ! というものもある。そうした市場の動きに対応し、充電、放電を細かく制御するには蓄電池が最適だと考えている。
本事業で培った経験をもとに、今後、グループが持つ他の発電所にも蓄電池を併設していく計画があり、その計画を実行性のあるレベルに高められたのも、弊社目線ではメリットになるだろう。

再生可能エネルギーに対する
今後の展開

気候変動対応、エネルギー安全保障の両面から、国内では再エネの急速な拡大が求められており、国が策定したエネルギー基本計画でも、再エネが主力電源として電源構成の4~5割を占める計画が示されている。再エネの大量導入と普及に向け、リーディングカンパニーの1つとして、弊社はさまざまな工夫や提案を行っていくが、同時に、本事業のように政策による補助、後押しも重要であると認識している。
資材・人件費の高騰、太陽光発電の適地減少もあり、これまでのような、FIT制度交付金頼みの電源開発では再エネ事業継続が難しくなるのではないか。FIP制度下では、発電事業者とアグリゲーターが一体となって、電力価値・事業収益を高める機会が広がっている。発電設備状況の密な共有による、インバランス量の低減、蓄電池タイムシフトによる売電単価とプレミアム価値向上、PPA活用をはじめ需要家ニーズに沿った販売の創意工夫などが、今後を考える上でのキーワードになるだろう。
いろんな方向性が考えられるが、併設型の蓄電池は成果が見えやすく、実効性の高い選択肢だ。本事業をきっかけに、再エネ事業の拡大と、供給の安定化につながる取り組みを強化していきたい。
ENEOSリニューアブル・エナジー株式会社は2012年の設立以来、「再生可能エネルギーで世界を変える」をミッションとして太陽光、風力、バイオマスなど再生可能エネルギー発電所の開発・運転を行っている。運転中・建設中発電所の設備容量を2030年までに300万kWまで拡大することを目指し、ENEOSグループのエネルギートランジション実現をリードするとともに、脱炭素社会の実現に貢献していく。

本事業で設置した併設型蓄電池で、制御などのノウハウを蓄積し、
今後は他の再エネ発電所への導入も検討していくという。
「再エネを普及させるには、現場と行政の両方からアイデアを出し、
取り組んでいく必要があると思います。これからもチャレンジを続けたい」

ENEOS
リニューアブル・エナジー・マネジメント
株式会社の
実施体制スキーム図

本事業に関するお問い合わせ先

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ENEOS
リニューアブル・エナジー株式会社

経営企画部 広報 CSR チーム

電話:03-6455-4905

Email:pr@eneos-re.com

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株式会社

事業運営本部 業務部 総括チーム

電話:03-6455-4896

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